6、ヒースロー空港

 長かった飛行機の旅も終えようとしていた。機内では良く眠った。一週間ほどほとんど寝ないで結婚式の準備をしてきたこともあり、12時間の飛行時間中、3分の2ほどは寝ていたのではないか。映画はいろいろやっていたのだが結局「アンブレーカブル」を一本だけ見ることができた。これは二人で見ていたのだが結構面白かった。他にも見たい映画はあったが見る気力は残っていなかった。

 ロンドンは晴れていた。現地の時間はお昼でだった。残念ながら霧はかかっていなかった。飛行機を降りるとき横の座席に座っていたおば様が声をかけてきた。「靴どうしちゃったの?」

ばっちり聞かれていた。彼女が応えた「昨日結婚式だったんですけど、彼靴を実家に送っちゃったんですよ!」

おば様が「まぁ結婚式だったの。おめでとう。」となりのおばさまにも「昨日結婚式だったんですってっ!」「あら、まぁ、おめでとう」といった感じで祝ってくれた。

 「失くしたって言うのは説明する上で便宜上いっただけで、ほんとはなくしたわけじゃないんです」ぼくも答えた。そんな会話を聞いていたのか聞いてなかったのか、まえに座っていた女性の方々も「靴どうするの?」と聞いてきた。

結構みんなに聞かれていたんだと今気づいた。飛行機の中って結構ノイジーで周りに聞こえているなんて思ってもいなかったけど、けっこうビックリだった。

 さて、飛行機を出ると入国審査である。聞いてはいたけれどここもそうだった。キューイングである。窓口はいくつあっても一列に並んで、どこかの窓口が空いたら先頭から順に窓口へ行けるシステムだ。日本でも銀行のATMに並ぶときなんかに見られるあの並び方である。

 トランクなどの荷物はインバネスに直送されるはずなので、そのままゲートを出る我々だった。ちょっと本当に届くかどうか、心配ではあったが。

 空港内でまず探さなくてはならないものは靴屋である。そのためにまずインフォメーションへ行った。「i」の目印の所である。早速尋ねてみることにした。もちろん英語で。ちょっとイギリスでの初英語に緊張が走ったが、うまく意味は通じたようだ。ちょっとした会話だったが、我々が英語に不慣れなのは明確なようで、とても丁寧に、しかもゆっくりと答えてくれた。このゆっくりとした英語というのにも困ることがある。なぜならゆっくりでも発音はとても綺麗なのである。綺麗な英語はゆっくり話されたところで聞きにくいのは聞きにくいのである。まあゆっくりしゃべってくれたおかげでなんとか聞き取ることができた。案内のおねえさん曰く、靴屋は無いが、スポーツ用品店があるから、そこなら売っているだろう。ということだったので、言われたとおり行ってみることにした。

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